■「歯がなくなってしまってもあきらめないで!!」
「歯を残すのが難しい」とお話するときほど歯医者の私にとっても残念な事はありません。当然患者さんはショックを受けるでしょう。
「先生、どうなるんですか?入れ歯ですか?」
前章でお話した通り、一昔前までは残っている歯が少ないと「入れ歯」とお答えするしかありませんでした。
しかし今や、「歯が抜ける→入れ歯になる→なんだか年をとった気分」という憂鬱な方程式は過去のものと
なりつつあります。
21世紀の今、歯科医療は飛躍的な進歩を遂げ、機能的にも審美的にも天然歯に近い修復術が研究開発されています。中でもインプラント(人工歯根)が現在入れ歯に取って替わる代表であることに異論は無いでしょう。
そもそも失った歯の機能を取り戻すのは人類の夢でした。インカ帝国のミイラにはエメラルドの歯が植え込ま
れていたそうです。柔らかく食べやすいものが出回っていない古代において歯を失うことは死に直結、歯を取り
戻す手立てがあるならそれはむしろ生存の条件だったに違いありません。
その後、象牙、動物の歯、亡くなった人の歯などを植えたりしていましたが、どれもあまりうまくいきません
でした。近年になってステンレス、ゴールド、サファイア、セラミックなどを使用したインプラントが試されま
したが、失敗例も多くとてもお勧めできるような治療ではありませんでした。
その中でチタンとい金属が顎の骨と結合することが発見され、これが成功の鍵となりました。
私は過去の失敗例を多く見聞しインプラントには懐疑的でしたから、つい最近まで自分の患者さんにはやりた
くないというのが正直な気持ちでした。
しかしインプラントの実績が安定してきた今では、当院でも最後の手段としてお勧めしています。
その際、ご自身で歯を再植したり、周囲の歯を動かして穴埋めできないか、できるだけインプラントにしなくて
済むように考えてからにしています。やはり自分の歯を活用するに勝るものはありません。成功率が高くなったか
とはいえインプラントは所詮異物ですから。
「先生、そんなにいいものがあるなら、悪い歯なんかとっとこ抜いてインプラントにしてよ。先生、痛みを感じな
いって言ってたよね。歯が痛くならないし、なんせ自分の歯じゃないから磨かなくていいんでしょう!」
ここでまず1つ申し上げなければならないのは、インプラントするには条件があるということです。
それは人工歯根(歯の土台)を支える顎の骨(土壌)がしっかりしていなければならないという事です。歯槽膿漏
などでやせ細った骨にインプラントを植えても文字通り砂上の楼閣。そのままでは背術自体が不可能ですし、やった
ところで後の保証ができません。
神奈川県中小企業経営者協会発行「中経協会報」 健康歳時記より抜粋
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